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庄司 紗矢香 展
ペインティング "音楽の中の心象風景"+映像(映像共作
パスカル・フラマン)
2009年5月22日(金)〜6月13日(土)
13:00〜19:00(最終日も同じ)
休館日:日・月
入場無料
映像作品上映時間(予約不要)
(全日)14:00/15:00/16:00/17:00/18:00
*アーティスト・レセプション等の予定はございません。
■展覧会概要
このたびPUNCTUM(プンクトゥム)では、5月22日(金)より、世界的に活躍する若手ヴァイオリニスト・庄司紗矢香の初めての展覧会を開催する運びとなりました。
庄司紗矢香は、史上最年少で、また日本人として初めて『パガニーニ国際ヴァイオリンコンクール』で優勝し、その名を世界に知らしめました。以来、数々のコンサート、リサイタルを開き、着実にそのキャリアを伸ばしているヴァイオリニストです。(プロフィールの詳細は庄司紗矢香の公式サイトよりご覧頂けます。)
その庄司紗矢香が、2年ほど前から本格的に描き始めた絵画作品と、フランス人映像作家・パスカル・フラマン氏と共作した映像作品を発表いたします。
絵画作品は、本人曰く、音楽の視覚的表現=「第2のインタープレテーション(解釈)」と位置付け、庄司自身の頭の中で鳴っている音や、音楽を聴くときや楽曲を練習しているときに浮かぶ絵を、キャンバスの上に「実現」するべく制作をしています。
絵を本格的に描き始めたきっかけは、パリに拠点を移したあと、ベルクの協奏曲を必死で練習していた時だと庄司は言います。自身の内側に溜まったものを自分のために表現したいという思いと、自分の中に浮かぶ絵を描きたく、画材を探して描き始めました。練習の出来ない夜中の時間に、楽曲の「第2のインタープレテーション(解釈)に挑める」という喜びが、彼女の絵画制作活動の原動力となっています。
映像作品は、庄司の奏でるショスタコヴィッチの小品をバックに、庄司自身が演奏時に描いていたイメージを元にシナリオを作り、フラマンと共にロケハンおよびディレクション、編集した映像が被さります。
全体で10分程度の作品です。前半は、黒い画面に庄司の演奏のみが流れます。後半には、同じ演奏に映像が重なります。
なお映像作品は、上映時間を設定しております(全日14:00/15:00/16:00/17:00/18:00の計5回。予約不要)。
クラシックの世界にのみとどまらず、ひとりの若きアーティストとして、その活動の幅をひろげようと挑戦し続ける庄司紗矢香の初個展をどうかご高覧のほどよろしくお願い申し上げます。
初日より、展覧会カタログも発売いたします(このページ下部に通信販売についてご説明しております)。
*本展ではアーティスト・レセプションなどは予定しておりません。
*会場スペースの都合上、祝花などはご遠慮させていただいておりますので、予めご了承願います。
■展示作品(全9点)から一部掲載

9度の歯車 Wheel of dissonance
ブロッホ:ソナタ1番2楽章冒頭
24x33cm Oil on Canvas 2008

ピランデッロ通り Via
Pirandello
38x46cm
Oil on Board 2008

遠くから Lontano
ブロッホ:ソナタ1番2楽章
"Lontano"
40x40cm Oil on Canvas 2008

中世の手 hand
of medieval
リゲティ:協奏曲2楽章
65x81cm Oil on Canvas 2009

遠ある天使の思い出に Dem
Andenken eines Engels
ベルク:ヴァイオリン協奏曲冒頭
22x35cm Oil on Canvas 2007
■映像作品から一部掲載
ショスタコーヴィチ:24の前奏曲から「第22番 アダージョ」
3分44秒
■展覧会カタログ
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■内容
□執筆者:マリー・ドゥパリ・ヤフィル(美術評論家)、針生一郎(美術評論家)、片桐卓也(音楽評論家)、庄司紗矢香、プンクトゥム
□絵画作品図版6点、映像作品図版4点掲載
□A4判・20p・フルカラー・500部限定・1,000円(税込)
■販売終了致しました。
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■庄司紗矢香個展[於:プンクトゥム(東京)]によせて
マリー・ドゥパリ・ヤフィル(美術評論家)
私が初めてパリのカフェで若くて華奢な紗矢香に会った時、彼女はバイオリンについても、自身の輝かしい経歴についても触れず、一つの夢について語ってくれた。その夢とは音楽にまつわるビデオ制作で、彼女が演奏する時に頭に浮かぶイメージ、あるいはロシアやショスタコーヴィッチやタルコフスキーへの想いを映像化することであった。以来、少しずつ《Synesthesia》計画は生まれてきたのである。これは大胆な計画であったが、庄司紗矢香は彼女の天才的な演奏の聴衆への影響や、あえて他の芸術分野に挑戦するという冒険に対して全く恐れを抱かなかった。彼女の中には絶えず沸騰するエネルギー、豊かな感受性、多彩で力強い内面世界、強い希望、好奇心、抑えがたい美への渇望が存在しているのである。
音楽は彼女の世界を満たすが、それで充分であるとはいえない。彼女にとって役者になりビデオ作家になり、音楽家であり画家であるためには多くの人生が必要かもしれないが、人生は一回限り、紗矢香はここで今、その全てを試みようとした。そして私たちが知っているバイオリニストではなく、一人の若い画家として、彼女はサンジェルマン・デ・プレからほど近い小さなアパートメントの部屋で私に油絵を見せてくれたのである。
《Synesthesia》(共感覚)というタイトルは彼女がビデオ作家パスカル・フラマンと共に制作したビデオ作品のために選んだものだが、これは音楽がイメージを呼び、イメージが感覚を生み出すように、芸術は互いに呼応し合うと信じる彼女の考えによるものである。これはまさに庄司紗矢香の作品の中で示されており、すべてが彼女自身の内面への旅、彼女がそこで聴いた音楽、彼女が知るそのかすかな変化の中から着想を得ている。
キャンバスの上にあらわされた形の単純さや色彩の純粋さが、キャンバス全体を、呼び覚まされた記憶の感覚で満たしていく。音楽は彼女自身の中にある故、彼女は描くときは音楽を聴かない。彼女の絵画は、音楽が我々に馴染みのあるイメージ―曲線、色彩、モチーフ、そして感覚のイメージ化としての風景画をも―を生み出すという不思議さを示している。リゲッティのバイオリン協奏曲第2楽章から着想を得た絵のように彼女は人の身体の動きも描き、そこではたぶん彼女自身のものであろうバイオリニストの手が澄み切った輝く風景を生み出しているようにみえる。
紗矢香の中でプロコフィエフのバイオリンとピアノのためのソナタ第4楽章が響けば、色彩や暗示的抽象的な形が爆発する作品が生まれ、ブロッホのソナタに触発されればシュールレアリズムの風景が出現する。これこそ音楽が持つ魔術ともいえる力であろう。
「音楽は平原に吹く風の歌に耳を貸さず、夜の芳香に無関心なものであってはならない」とロシア出身のフランスの哲学者ヴラジミール・ジャンケレヴィッチは言っているが、まさに彼と同じく、紗矢香は芸術だけが人生を詩的に終わりなきものにすることを知っているのである。
パリにて 2009年3月
■作家ステイトメント
音楽と絵画/庄司紗矢香
音楽はいつも私にとって不可欠であったし、これからもずっとそうであることは確かだ。
ヴァイオリンを習い始めた頃でひとつ覚えているのは、自分からこの楽器を欲したという事。しかしヴァイオリンという美しい楽器の音の魅力やそのユニークな奏法を超えて私を魅了したのは、舞台に立つ演奏家の姿というより、ただその音と音楽が私たちに与える「世界」そのものだった。その「世界」は見知らぬ土地のように神秘的で、私に心の内での旅を夢見させてくれた。
ヴァイオリンを始めてから間もなく、画家である母のもとで絵も覚えた。当時私は母の横にイーゼルを並べよく一緒に油絵を描いていたが、15歳で青りんごとソーセージの国に旅立ってからは高校の授業とヴァイオリンとドイツ語の勉強に追われ、ギムナジウムの美術の授業以外では描くことはなくなっていた。
でも私が8年間過ごしたケルンの街には、近代的なコンサートホールやローマ遺跡の他に、近代美術館と古い映画を上映している映画館がひとつずつあって、お気に入りの作品やまだ知らぬ作家を探すべく順繰りに訪れたものだ。また、演奏旅行に出るようになってからは、鞄に本を一冊入れて、時間に余裕ができれば美術館に出かけることをやめなかった。そこで出会った数々の「世界」は、私に幼いころ夢見たものを思い出させてくれ、再び新鮮な気持ちで音楽に向き合うことを促してくれた。そうしているうちに十代後半には、演奏するとき私が見る映像を実際に目に見えるものにしたいという漠然とした夢が私の内で出来上がっていた。
音楽大学を終えてふと周りを見渡せばいろんなものが見えてきた。自身を含めて閉鎖的になりがちなクラシック音楽界の見えない扉、芸術がイメージ先行の商品になりつつある時代に疑問をもつアーティスト。パリに引っ越したのも音楽の映像化という夢に加え、そんなミネストローネのようにごちゃまぜな思いを抱えてのことだった。演奏会とその準備の合間に美術館やビデオテック、ギャラリーを巡り、数々の友人に出会えたことで美術評論家のマリー・ドゥパリ・ヤフィルを知ることとなった。私の夢を話し、彼女と一緒にビデオ・アーティストを探している頃、ある晩ひとつのフレーズが頭の中で鳴り続ける中、再びキャンバスに向かった。するとその時初めて、描くことによってその音楽と自分の無意識的なつながりが見えるのを知って驚いた。
クラシック音楽における「演奏」=インタープレテーション(解釈)とは、作曲家のメッセージを伝えること。言ってみれば音符を読んで弾くという、見方によってはとてもシンプルな作業だ。でもそこには、必ず「演奏家の想像力」が加わり、それによって音楽ががらりと変わるのが面白いところ。だから時には演奏家とは想像力の仕事だとさえ思えてならない。ヴァイオリンの演奏が私にとって第一のインタープレテーションとするならば、その音楽の内に見えるものを絵画や映像で表現してもみたいという願いは、私に第二のインタープレテーションとしての新たな扉を開いてくれた。私はこの個展が音楽と絵画をそれぞれ愛する人たちの自由に行き交える扉ともなってくれればと願っている。
■プロフィール:庄司紗矢香(しょうじ・さやか) ヴァイオリニスト
庄司紗矢香公式ウェブサイト
日本を代表する若手ヴァイオリニスト。14歳で「ルツェルン国際音楽祭」とウィーン楽友協会に出演。その後1999年、「第46回パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクール」に日本人として初めて、そしてコンクール史上最年少で優勝。一躍世界中から注目を集め、ウォルフガング・サヴァリッシュ、シャルル・デュトワ、ウラディーミル・アシュケナージ、ロリン・マゼール、ズービン・メータなど、世界中の著名な指揮者たちからソリストとして指名され共演。2000年にはドイツ・グラモフォンからメータ指揮のイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団とパガニーニ《ヴァイオリン協奏曲第1番》ほかでCDデビューし、話題となった。近年はI・フィッシャー/イスラエル・フィルやテミルカーノフ/ ロンドン響、チョン/フランス国立放送フィルなどと各地で共演。N響とは、デュトワ指揮の2002年9月定期で初共演し、ロジャー・ノリントン指揮の2006年11月定期でも共演、いずれの年とも「ベスト・ソリスト」に選ばれた。今後はスカラ座フィル、ライプツイッヒゲヴァントハウス、バイエルン放送響、シンシナティ響等と共演予定。ケルン音楽大学卒業。1999年度都民文化栄誉章、2000年出光音楽賞受賞。
■プロフィール:パスカル・フラマン 映像作家
1968年フランス・パリ生まれ。アートスクールでビデオや16mmおよび35mmフィルムについて研究や実験を行う。卒業後の1999年、作曲家Laurent
Saietと共に「tribute project: Cinehilie 1」を制作。2000年からポンピドゥーセンターやグラン・パレス、FIAC、アートパリ等、パリでのグループ展やフェスティバルに数多く参加。2006年、数名のアーティストらと、450Fの空間に音響が響きわたる壮大なビデオインスタレーション「Ici
meme」展を開催。
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